空に浮かぶ、ひろびろとしたデッキ。 まるで自分だけの船に 乗り込んだような気分。 今日はどこまで行こう。 潮風に背中を押されて、 心の旅がはじまります。

そんな船へと続くのは、 神戸市長田区のとある細い路地。 車こそ入れないけれど、 その先に広がっているのは、 誰かの夢のような暮らし。

たどり着いた先にあったのは、 2棟が連なる古民家と どこまでも広がるようなウッドデッキ。

ふと足を止めて見上げれば、 青空と街並み、その向こうに続く山並み。 端まで行けば、海が見えるそうです。

食料の心配は、ひとまずご無用。 ウッドデッキの向こうには、 自分たちの手で育てる畑が広がっています。

ちょっぴりスリリングな橋を渡って、 さあ、“農の旅”へ出発。 まずは土を耕し、種をまくところから。 気まぐれで自由な、長い旅のはじまりです。

（とはいえ、すぐ近くに商店街もあるそう。 どうぞご安心を）

家への入り口は、こちらの引き戸。 当時のままの佇まいが、どこか頼もしい。

船内…ではなく、お家の間取りはこちら。 お部屋はたっぷり。 この旅をともにする仲間たちの、 お部屋もちゃんと用意されています。

窓の格子越しに見える青い空。 リビングからつながるウッドデッキが、 物語の続きを誘います。

たとえば、窓際に 小さなテーブルと椅子を置いて “海の見える古民家カフェ” なんていかがでしょう。

この素敵な船を守ってきたのは、 長い年月を重ねた柱や梁、そして壁たち。 懐かしくて、不思議と安心感がある。

個室がきっちり仕切られていのではなく、 空間が柔らかくつながっているのも 魅力のひとつ。 階段横の押し入れから布団を持ってきて、 みんなで雑魚寝──なんて夜も楽しそう。

戦前から変わらず残る壁には、 これまで重ねてきた日々と、 いくつもの物語が染み込んでいました。

そっと寄り添うように、でも芯は強く。 この家を静かに、たくましく 守り続けてくれているのです。

水回りはまるっとリフォーム済みで、 洗面室はシンプルで美しい仕上がり。 そして、うれしいサプライズがひとつ。

なんとお風呂は、サワラ材の木風呂。 写真からでも香りが漂ってくるよう。 早朝、畑でひと汗かいてからのひとっ風呂 …なんて最高の贅沢じゃないですか。

さて、キッチンはというと 繋がってはいるものの、 素敵な"離れ"にありまして。 こちらがそのダイニングキッチン。

実用的なシステムキッチンが設置されており、

調理スペースもシンクも広々。 畑で採れたての野菜をそのまま調理して、 ダイニングでいただく。 そんな日常がここでは叶っちゃいます。

離れは丁寧に整えられていて、 木の香りとともに、 母屋の記憶が静かに息づいています。 家族でほっと過ごす場所として、 ここを“特等席”にしておくのも良さそうです。

そして、なんといっても、この景色。 眺めるたびに、やりたいことが ひとつずつ浮かんでくる。

畑で採れた食材を使って、小さなレストラン？ デッキを活かして、コミュニティスペース？ それとも、潮風の中でくつろぐカフェ？

でもまずは── 何も決めず、ゆっくりと、 自分だけの航海を楽しんでください。

この家が重ねてきた長い時間に比べたら、 少しくらい遠回りしたって、 ちょっとした旅のようなもの。

ここから あなたの新しい物語が始まります。

文・せのおさくら リノベーションのしごと。 朝ごはんを座って食べる暮らしをめざす。