目を見張る美しさのダイニングキッチン。
これはただ者ではないぞと思ったら、
名作ヴィンテージでした。
ビラ・ビアンカやビラ・モデルナで
知られるビラ・シリーズのひとつ、
その名も「ビラ・サピエンザ」。
設計は、同シリーズの多くを
手がけた坂倉建築研究所です。

場所がちょっと意外でして、
世田谷区・上馬5丁目の
閑静な住宅街。
こんなところにビラ・シリーズが
あるなんて知らなかったな。
全11戸のこぢんまりとした
コミュニティで、
賃貸に出るのはきわめて稀だそうですよ。

それでは、このレアな機会に
たっぷりとご覧ください。
立派なパーゴラがめぐらされた
アプローチを抜けて
幾何学模様の鉄格子門を開けると、

建物にぐるりと囲まれた
パティオが現れます。
どこか無機質な空間に
シンボルツリーが映える、
計算されたコントラスト。
ここから廊下や階段を通って
各住戸へ向かうのですが、

今回ご紹介するお部屋はちょっと特別。
共用動線とは切り離された
専用のアプローチと玄関を備え、
玄関前には平置き駐車場が
1台分確保されているのです。
つまり戸建て感覚で暮らせるということ。

間取りは、ゆとりある2LDK。
1981年の竣工時の雰囲気はそのままに
現代的な要素を加味した
リノベーションが絶妙で、
ここは既存分かな？ リノベ部分かな？
と考えながら眺めるのも楽しいですよ。

黒く光る扉を開けて室内へ。
玄関で存在感を放つ
ユニークなかたちの室内窓…
ではなく壁に仕込まれた照明が素敵です。
居室へ続く廊下に敷かれているのは
ヘキサゴンタイル。
玄関を上がって右手には
トイレがありますが、
まずは左のリビングへ進みましょう。

こちらがリビング。
続き間になった20帖の大空間です。
扉のすぐ横の壁に
ちょうど裏側に位置する
玄関と同じ照明がありますね。
この照明と扉には
もともとステンドグラスが
嵌まっていたはずですが、
柄のないガラスに入れ替えて
現代的にアップデート。
床一面に大胆に敷かれた
ヘキサゴンタイルにもお似合いです。
奥の窓からはパティオと
シンボルツリーが眺められます。

リビングを逆側から見るとこんな感じ。
セルジュ・ムーユの照明は
取り外し不可だそうですが、
言われなくても外しませんとも。

そして、リビングの隣にあるのが…

冒頭でご紹介したダイニングキッチン。
食洗機、オーブン、
グリル付き3口ガスコンを備えた
至れり尽くせりな機能はもちろん、
深いネイビーと白を組み合わせた
カラーリングがすばらしい。
シンクとコンロの高さが
微妙に違うことにも
ちゃんと理由があるのでしょうね。

極めつけは天窓。
光を取り込んでくれるだけでなく
インテリアとしても機能しています。
幾何学っぽい柄のガラスは
既存のものなのか、リノベして
入れ替えたものなのかわかりませんが、
とんでもなくセンスがいい。

LDKのほかには居室が2つあります。
こちらは9帖の洋室。
中庭に面したコーナー窓から
自然光がやさしく注ぎます。

逆側には備え付けのミラーと
クローゼットもありますよ。
収納はご覧のとおりの大容量で
手持ちの洋服を全部しまえそう。
中央の棚に外に開いた小窓があって
湿気対策も万全です。

一方、こちらは5帖の洋室。
コンパクトですが、
二面採光で収納も完備。
木枠の窓がいい味出してます。

サニタリーはホテルライク。
白いタイルで覆われたバスルームって
なぜこんなに気分が上がるのでしょう？

せっかくの名作住宅が
リノベーションで台無しに…という
残念なケースはたまに見かけますが、
本物件はそんな落胆とは無縁。
ヴィンテージの風格と
現代的なセンスが自然に混ざり合い、
どこか既存部分でどこがリノベ部分なのか
まるで見分けがつきません。

美意識にうっとりするだけでなく、
暮らしやすさにうれしくなる。
時代を超えて愛される
名作ビンテージマンションは
そうでなくちゃ、と思うのです。