京都の路地奥に、ひっそり佇む、
平屋の京町家。

モダンな気配を漂わすその家の中は
思わず息を呑むような世界が
広がっていました。

はて、ここは料亭かしら。
グッとトーンを落とした内装、
丸みを帯びた左官仕上げの天井は
洞窟のようでもあります。
まさに隠れ家。

玄関から正面に見えるのは、坪庭。
どうですか、もうこれだけで麗しくて
ここに帰ってこれる日常が羨ましい。

そして、この床タイルの質感と
張り方からして
只者ではないのが伺えますよ。

硬いはずなのに、
ふっくら柔らかそうにさえ見える
角の取れた墨色のタイルは、
敷瓦というものだそう。

敢えて斜めに敷くことで
空間の広がりが感じられるという工夫。

仄暗い室内に、天窓から差す光。

梁など躯体現しになった空間に
間接照明が灯ると
奥行きと抜け感が増すと同時に
時を重ねた味わいと洗練された新しさが
調和しつつ、引き立て合います。

トントン葺きという板張りの天井は
素朴でどこか愛らしさも感じます。

鈍く光を放つ真鍮のような、渋さと色気。
金のような華やかさはないけれど
グッと心を捉えて離さない。

型板ガラスに繊細な格子が美しい
昔ながらの木の建具、
お部屋があるのかなと思いきや、

開けるとなんと、そこはキッチン。
生活感を美しく隠す工夫に驚きます。

ステンレスにブラックという
無駄が削ぎ落とされ洗練されたスペース。

スポットライトが落ち
まるでギャラリーの一角のようでもあります。

洗面所やお風呂場は
その隣に位置していますね。

どこまで感嘆させてくれるのでしょうか。
SF映画を彷彿とさせる、
so cooool!!!な洗面所。
寝起きのボサボサ頭で覗き込むのが
申し訳なくなる…。

シャキッとしよう、
自然とそんな気持ちになる場所。

あ、お風呂は意外と普通でした。
小窓があるのが嬉しい。

その小窓の向こうは坪庭なので
開けていても、安心です。

雨の日でも窓を開け放って
椅子に腰掛け、濡れそぼつ石を
見つめていたくなるような坪庭。

トイレは、玄関入ってすぐのところにあります。

リビングの壁に並ぶ3つのニッチ。
瓦タイルがあしらわれ
スポット照明も付いていて

何を飾ろうか、並べようか、
悩むのもまた楽しい時間でしょうね。

アーチの向こうには
小さな和室があります。

障子は太鼓張りになっており
開けていても閉めていても風情があり、
そっと開けてくぐる度、
小さく心がときめきます。

3帖というミニマムな空間ながらも
だからこそ、何だか落ち着く…。

茶室のような、上品な旅館のような
おこもり空間があるという至福。

侘び寂び、陰影の美しさ、
あらゆる美意識がギュッと凝縮され
美しく生まれ変わった京町家。

床、建具、照明、どれひとつとっても
芸術的な美しさがあり

和の美しさを堪能させてくれ、
さすが京都…と唸ってしまいます。

二条城のすぐそばに位置し
最寄駅から京都駅までは数駅という利便性。

たった9坪という広さながら、
いや、それゆえに拘ったのかもしれない
至高の贅沢空間は、
家で過ごす時間をきっと心豊かに
してくれることでしょう。