明治10年築の元機織り屋さんという
二軒並びの平屋の町家。

京都にはまだまだこんな物件が
あちこちに残っているのですね。

リノベ済みでそんなに古い建物とは
思えないほど、きちんと、小綺麗に。
昔ながらの瓦屋根に
ブラウン系のタイル壁。
町に馴染み、地に足がついてる感。

扉を開けると出迎えてくれる土間。
ちょっとそこまで、なら
下駄でも履きたくなる風情。
カランコロンと鳴る下駄、
カラカラと音を立てる引き戸…たまらん。

おくどさんの名残りのように佇む、
ぴかぴか銀色のシンク台。
ガスコンロを置いて
しゅんしゅんお湯を沸かす冬の朝。

初めてなのに、懐かしくて、温かい。
やっぱりこういうのがいいんだなぁ。

年月を重ねた優しさと静かさが満ちている。
ひっそりとした部屋に
さんさんと光が降り注ぐ。
なんでだろう、胸がキュンとなる。
ひとりでも、きっと大丈夫って思う。

この陽だまりがあれば。
出窓に腰掛けて本を読んだり
ちゃぶ台を置いて書き物をしたり
ポケーっと体育座りをしたり
猫みたいに丸くなって眠る。
ざらざらしたラジオの音が似合う。

お湯が沸く音がして、
つっかけ履いて土間へ下りる。
とぷとぷと珈琲を淹れ、
なみなみと牛乳を注ぐ。

すっくと伸びるはしごを上り、
いざ、ロフトへ。

ここが至福の秘密基地。
天窓もあるんだ、最高でしょう。

だから天気の良い日でも、
つい、こもりたくなる。
古本屋で大人買いした
数十巻ある漫画、文庫本たち。
リサイクルショップで見つけた
レコードプレーヤー、
週末ごとに増えていく、レコード。

時代に逆行してるけど、この部屋では
ちょうど良くて、心地良い。

上から見ると、
自分の生活空間のほぼ全てが見渡せる。

収納扉の木彫りの模様も、
かすれ具合も愛おしい。

部屋の奥の後から造りました的な空間、
お風呂です。

ちんまりおひとり様サイズ！
でも湯船があるなんて嬉しいな。
体育座りでしっかり全身あったまろ。

土間突き当たりの白い扉が、トイレ。

洋式にしてもらってすみません、
ありがとうございます。

このくぼみは寝床にしようか。
大きな机を置こうか。

この広さ、ふたり暮らしもいけるかも。
けれどここは敢えてひとり暮らしを選びたい。

誰にも邪魔されない、路地の奥。

京都らしさを湛えた
秘密基地付きの小さな平屋で
満喫する、孤独な時間。

光に満ちた静かな時間。
そうして、京都の町の片隅に
自分を馴染ませていく、楽しみ。
アトリエとして使用可とのことで
ひとり、ものづくりに没頭するにも
もってこいな環境。

2年契約と決まっているからこそ
後から思い出した時、
何よりも贅沢でかけがえのない
人生の1ページになりそうな気がする。