木枠にはめ込まれたガラスの壁と天井。
床の柄はジャクソン・ポロックを
思わせますが、よく見ると
幾何学模様が散りばめられています。
目の前に開けているのは、蔵の扉。

振り返ると、こんなふう。
光がめぐるこちらは
京町家の母屋と蔵をつなぐ廊下と
サンルームの機能を兼ね、

さらにお庭を鑑賞できる空間でもあります。

これはまた斬新な町家リノベーションだなあ
と思いきや、家が改修されたのは35年前。
町家リノベという発想自体が珍しく
ほとんど前例がなかった時代につくられた、
いわば町家リノベの草分け的存在なんです。

元の物件は、今出川通に面した
昔ながらの商家。オーナーの依頼を受けて、
当時、京都工芸繊維大学で助教授をしていた
西村征一郎氏が増改築の計画や設計を
手がけることになりました。

そうして生まれたのが、
京町家が持つ“暗い”イメージを覆す
こちらの家。
サンルームを配することで
採光を最大化するだけでなく、
従来は倉庫としての役割しかなかった
蔵を生活空間として蘇らせました。

玄関には、商家だった頃の名残りが。
今出川通に面した正面扉を開けると、
ショーケースのような
豪華な和室が姿を現します。
かつてはここが店の間だったのでしょう。
写真の奥に見える扉から家の中へ。

さきほどの和室は、
現在は茶室兼客室に。
大きなガラス窓の向こうが玄関です。

別アングルも良いですねえ。
アーチの扉がかわいいったら。

和室の隣はこの家のメインスペース、
12帖のLDKです。
想像していた以上のモダンな空間に
思わずため息がもれます。
この内装デザインが
35年前の仕事ってまじですか？

サンルームからこれでもかと光が注ぎ、

かつての火袋を利用した高い天井も
開放感に一役買っています。

キッチンは2016年に全改装済み。
現代的な設備はもちろん、
カウンターと一体化した
小さなテーブルもうれしいな。
忙しいときはここで
ささっと食事を摂れますね。

ここからサンルームを通って
蔵へ向かうのですが、

サンルームの逆側、
庭がないほうにはお風呂や洗面所、
トイレがまとまっています。
いずれも白が基調で清潔感があります。

蔵へ進む前に、
母屋の2階も見ておきましょう。
和室とLDKの間にある
階段をトントンと上がります。

9帖の洋室はホテルライク。
高級ホテルの寝室と言われても
おかしくない上質な空気が漂います。

一方、8帖の和室は侘び寂びを感じる
シンプルな空間。

欄間も豪華絢爛ではない
なんとも言えない味わいがあります。

和室横の廊下から
バルコニーへ出ることができ、

そのまま蔵へ渡ることも可能。
このサンルームの屋根、外国の
映画とかでよく見るやつだ！
キアヌ・リーブスやトム・クルーズが
ガラスをぶち破って階下に
落下するシーンが思い浮かびます。

バルコニーを渡った先の
蔵の2階にはこんなお部屋が。
わー、立派な梁！
子ども部屋や書斎に良さそうです。

蔵の1階へは、こちらの階段を使って。

横から見ると、
すばらしく状態の良い箱階段でした！

1階のお部屋もいろいろな用途がありそう。
改造して、趣味の部屋とかどうかな。

こんなお家に住めるってだけで
夢のようですが、
今出川通沿いとくれば
ビジネス用途の可能性も考えたくなるもの。
自宅兼事業所、売店、飲食店、
あるいは宿泊施設など、
さまざまな活用方法がありますよね。
（重飲食とゲストハウスについては
要相談とのこと）

いや用途は二の次でいい、
とにかくこのサンルームのある空間に
住んでみたいと思わせる、
抗いがたい魅力のあるお家でした。