豊かな自然に囲まれた 伝統的な日本家屋。 築年は不詳とのことですが、 昭和10年以前なのは間違いないそう。 その佇まいの美しさに 思わず見惚れてしまいます。

外観でとりわけ気になるのは2階部分。 だって、ご覧くださいよ、 二面にずらり並んだガラス戸と高欄。 木製建具の味わい深さはもちろん、

屋内からの眺望のすばらしさったら！ 90年以上前に家の設計をした人は おそらく景色を楽しむために この外観を採用したのでしょう。

今回、このお家のリノベーションを 手がけたルーヴィスさんも、 設計プランを考えるにあたっては 周辺の自然が特に印象的だったそう。 あ、申し遅れましたが、このお家は リノベーション物件。

2階建ての母屋と、 同じく2階建ての蔵が 一体になった一軒家です。

ほら、向かって右側が蔵で、左側が母屋。 このアングルだと 母屋よりも蔵が気になりますよね。 とくに1階部分の大きな開口。

じつはこの開口、ガラスがはめられ 大きなFIX窓のようになっているんです。 ルーヴィスさんはこの部分の 大胆な設計をきっかけに 「建物の既存の趣を残しつつ、 くり抜いたり穴を開けたりして 周辺環境を眺める新たな視点を得る」 というリノベーションのコンセプトを 固めていったそうですよ。 その結果、どんなおうちに 仕上がったかといいますと…

まず、玄関扉を開けると広い土間が。

土間は玄関入って右側、 蔵の前までつづいていて、

蔵の入口付近はこんなに開放的。 オープンエアなのかなと思いきや、 右側はさきほどご紹介したガラスの開口。 奥にもスケスケの建具があって、 サンルームような空間になっています。 蔵の両開き扉に後ろ髪を引かれつつ、 いったん母屋のほうへ。

土間はキッチンにつながっていて、 その向かいに1階の居室が広がります。 襖や障子などの建具を取っ払った空間は 日本家屋とは思えないほど明るく開放的。

お部屋の奥にあったはずの収納も すべて取っ払われていますね。 左側の縁側も土間っぽいから、 さっきの玄関やキッチンの土間も含め 土間で板間をぐるりと囲んでる感じ。 写真の照明や植物、 スツールは付属しませんが、 めちゃくちゃ参考にしたいなあ。 箪笥は残してくれるそうです。

蔵は母屋の中からもアクセスでき、

居室とは打って変わって おこもり感のある空間。

書斎や作業スペースに するのがいいかもしれません。

ふたたび母屋に戻りまして、 奥に見える木の扉を開くと

サニタリーでした。 洗面やトイレはピカピカの現代風で、

バスルームもまるっと新しく。 水回りは総じて新しい設備と 既存の建具や収納との 組み合わせがたまりません。

2階へは母屋と蔵の間に位置する 階段を使って上がります。

母屋の2階は冒頭でご紹介したとおり 広縁が和室をぐるりと囲むつくり。

このように、ぐるりと。 こんな素敵なお家、 残してくださってありがとうと オーナーさんに一筆したためたくなります。

すばらしい意匠の木製建具たちは ほぼ既存のものを利用しつつ、 竪額障子の障子紙を半透明のものから 不透明のものに変えて動線を操作したり、

床の間の一部をくり抜いて ポールを設けたりと、 そこかしこにさりげない仕掛けが。

蔵の2階へも母屋からアクセス可能。 1階よりあたかみのある空間なので こちらはぜひ寝室に。

ど迫力の梁に見守られて ぐっすり眠ることができそうです。

場所は千葉県君津市。 90年前の人も現代の人も虜にする 自然豊かな環境ながら、最寄りの JR久留里線 小櫃駅まで徒歩16分、 東京や横浜へも車で1時間ほど。

まあ少し不便かもしれませんが、 それをものとものしない 魅力的な環境と日本家屋。 ここに住んだり事務所にしたり できる、またとない機会です。