やりたいことは 手からこぼれるほどあって、 そこにかけられるお金は 残念ながら多くはなくて。 そう感じているのは 彼も同じだったようで、 自然と決まった共同生活。

家賃も水光熱費も ぜんぶふたりではんぶんこ。 慣れない都会でどうにか やっていけるように、 つらさも苦しさも 仲よくふたりではんぶんこ。

「モデルルームみたいに ピカピカの部屋でさぁ」 なんて語り合いながら あれこれ検索して理解した、 都会の家賃の高さ。

絶望していたところに 彼が見つけてきてくれた、 家賃6万の2K、お風呂あり、 バストイレ別で庭付き！ ふたりで割って3万円、 それならいけると即決した。

収納があるほうは どうか譲ってください、 お願いしますなにとぞ……

私のほうが荷物が多いと 明らかにわかる 段ボールの山を見て、 彼もしぶしぶ納得してくれた。

4.5帖の和室、 実家の畳と同じにおい。 未来を想像して 不安がズンと出てきたら、 すぅはぁと大きく深呼吸して あの懐かしさを思い出す。

それでも回復しなければ、 ずりずりと畳をはって ふすまをスススと開ける。 「勝手に開けるな」と 毎回つぶやく彼だけど、 閉めろとは言わない。

6帖の和室は彼のもの。 クリアの収納ケースに 荷物がスッキリ収まっていて、 そういえばむかしから 整理整頓がうまいよなと 口には出さずに感心する。

窓を開けると緑と石。 好きな花でも植えようかと 思ったこともあったけど、 この無造作な感じが 実家の近くを思い出すから、 しばらくはこのままで。

ふたりとも料理は まったくできないから、 毎日がチャレンジだ。

しょっぱかったり、 甘かったり、苦かったり。 食材を無駄にはできないから、 まぁいけるでしょと 目の前のよくわからない料理を ふたりしてガッと食べる。

ふたりで住む家だから、 お風呂とトイレが ちゃんとわかれているのは 本当に本当に助かる。

私がお風呂に入っているときに 彼がトイレをしたくなっても、 バタバタ慌てる必要はないし。

彼がトイレに入っていても、 私は優雅にバスタイム。 ありがたいことです。

チョコレートみたいな おいしそうな鏡は、 見るとちょっぴりお腹が空く。 なめたら甘そう、なめないけどね。

ふたりでいっしょは いつか終わるだろうけど、 お互いが進みたい道に 歩き出せるそのときまで、 どうにかここで生きていこうね。 支え合って、助け合って、 ひとりになるそのときまで。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。 @kmn_nana