Close

小さな団地、穏やかなふたり。

昔から団地が好き。
特に夕暮れ時。
ポツポツと灯る明かりを眺めながら
それぞれの家庭で繰り広げられる風景や
笑い声を想像して。

あのオレンジの灯りの家の
今夜の献立は何だろな、なんて考える。
泣いたり怒ったりもあるだろうけど、
勝手に温かい家族の風景を思い浮かべる。
ふっと流れてきた焼き魚のにおい、
美味しそうな煮物のにおい、
カレーのにおい。
何故だか泣きたくなるような
気持ちを抱えて家路を急ぐ。

玄関ドアを開くと、
私たちの可愛い部屋が待っている。
まんまるお月さまみたいな電気が
ポッと、いつも心を和ませてくれる。
「おかえり」という夫の声と共に流れてきた
味噌汁のにおい。

先に帰って来た方が
夕飯支度を始めるのが我が家のルール。
「半額だったから買って来ちゃった」
と、帰りに買ったポテトサラダを出す。
「いいね!唐揚げのつけ合わせにちょうどいい」
部屋着に着替えて、
並んで盛り付けを手伝ったら、
「いただきます」。
夫の作る味噌汁は、
私のと違って具の存在感がすごい。
同じように大きく切っても
同じ味には出来ないのだった。

間取りだけだと一戸建て?と思うでしょ。
でもここは団地なの。

スタイリッシュさと可愛さが合わさった
このキッチンが1番グッときた所。
朝の光も夕暮れの光も
優しく通す窓の前に立つと
すっと心が整う。
休日の朝は、ここでいつもより
ゆっくり丁寧に珈琲を淹れる。

この有孔ボードの壁には
使い勝手、見た目、使用頻度、等々考慮し
私たちの審査を通過した
選ばれし道具たちが並んでる。

横の洗濯機置き場、兼脱衣場は
ふわりとした布をカーテンにして
やんわりと、仕切って隠して。

少し珍しい黒い水栓が
アクセントの洗面所、
スマートフォンみたいな形の鏡は
私の大好きな色。
毎朝キュッと気分を上げてくれる。

柔らかい白で統一されたお風呂は癒し系。
小さな湯船にたっぷりお湯を張って
横に並べたカラフルなバスソルトから
その日の気分にぴったりなのを選ぶ。
とぷんと鼻まで浸かったら
その日の恥ずかしかった失敗も
上司の嫌な一言も、溶けて流れてく。

以前は大好き、というか
常につけっぱなしだったテレビは
今はほとんどつけていない。

ふたりで過ごす
穏やかな陽だまりみたいな時間が、
至福の時。

読書好きの私たちの、小さな図書館。
秋冬のひなたぼっこゴロゴロ読書タイムが
待ち遠しい。

「小さい頃ね、
お父さんもお母さんも仕事で
しょっちゅう帰りが遅くて。
夕方になると時々心細くなって
ベソかいてた私をお姉ちゃんが
近くの団地の公園に連れてってくれたの。
遊んだり、ベンチに座って
団地をぼんやり眺めながら
『あ、あそこのお風呂の電気がついたよ』
『秋刀魚焼いてる!どこのおうちかなぁ』
なんて話したりして。
団地を見て時々切なくなるのは
あの頃の寂しいような、
あったかいような思い出のせいだと思う。
でも、今は、寂しくない。」
って布団の中で
ウトウトしながら話してたら
あったかい大きな手が
頭をよしよししてくれた。

「次のお休みはどこへ行こうか」
って声に、あそこやあそこが浮かんで
答えようとしたけれど
もう、言葉にはならなくて
あったかくて深い眠りの沼に
ずぶずぶと、沈んでいった。
  • 募集中の物件
  • 物件ファンファンの会
  • 物件を載せませんか?

Follow Me!

  • Twitter
  • Facebook
  • Instagram
  • UNKNOWN KYOTO