初めて入った瞬間に、
この部屋に強く呼ばれている気がして、
新しい街について何も調べないまま、
すぐにここに決めたのだった。

廊下のない潔いワンルーム。
20㎡もない小さな城ですが、
このコンパクトさを愛して生きてる。

いつもと同じ時間に仕事から帰って来ると、
これまではまだ夕方の空気だったのが
だんだん暗くなってくるのがわかった。
暑い季節は苦手だったはずなのに
秋めいてくるのがさびしい。
初めての夏も、これでおしまい。

日中にたくわえた熱気を逃がすために
すこしだけ窓をあける。
内覧のときの不動産屋さんは、
本当に申し訳無さそうに
ベランダの小ささのことを語っていたけれど
わたしはこの床の緑の色味も、

この風景があるのも、大好き。
ときどきやってくる、
この街にひとりぼっちだという感覚を
やさしくなぐさめてくれるようで、
ふと立ち止まるのはいつもここ。

さ、感傷的になるのはおしまいにして
ゆったりとした部屋着に着替えよう。
着ているものがかわると、
しっかりと休まる準備ができる。

今日もそうめんでいいかな。
この部屋に決まって
最初にしたのはガスコンロを探すこと。
納得いくものが届くのに時間はかかったけど
おかげで毎晩、微笑ましい気持ちで
ごはんをつくることができる。

一度気を緩めると、
お風呂に入るのが
ついつい後回しになってしまう。

この部屋が安心できるのも、
サニタリーにちゃんと
清潔感があったおかげかもしれない。

明日履く靴だけ磨いて、
今日はもう寝ちゃおうかな。
いいかな。いいよね？

朝になったらまたがんばりますので。
毎日見る場所だから、
レトロで好みな共用部でよかった。

はじめての大阪と仕事に
いっぱいいっぱいだった私も、最近では
部屋を良くしよう、という
余裕が出てきたところ。

今週末はイケアを覗きに行こう。
大正駅まで散歩がてら歩いて、
そこから直行バスに乗ろう。

いつか、もっと広い家に
引っ越すことがあっても
この部屋のこと、絶対に忘れないんだろうな。